
モルカンパイソン
Morelia clastolepis 和名としてはセラムニシキヘビの方が妥当かもしれないが、もうこの種に関してはモルカンが定着しているし、私としても耳に馴染んでしまった。もうひとつの呼び方に「マルクパイソン」とあるが、これもモルカンとほぼ同語。ただ、マルクパイソンとして販売されている個体の多くが、学名表記されると
Morelia tracyae、つまりハルマヘラパイソンとされていることが多い。しかし、そのほとんどが、というか今まで見たマルクパイソンは全てがモルカンだった。ハルマヘラがそんなんにポコポコ入ったらちょっと大変だ。ハルマヘラが至高のパイソンと崇める私は「マルクパイソン」の名がある度に心ときめかせ、絶望に打ちひしがれてきた。ちなみに究極のパイソンはと問われれば、オーエンペリという些か廃人気味の嗜好に陥りつつある。
個人的に思うが、この類が好きな人ならばこれらのアメジストコンプレックスは見間違い様がないのだが、ショプだけでなく個人飼育者も取り違えて認識していることもあり、やはりそれは輸入時のインボイスを優先する結果なのかと思う。同じことは以前書いたが、ブラッドパイソンにも言えよう。
趣味として飼うならば、結局のところそうした細かい同定や分類の知識はいらないという考え方もあるが、野生動物を扱っている以上、目の前の個体の情報だけでは飽き足らず、その個体が属するグループについてなんでも情報を欲しくなったり、兎に角情報餓鬼になるくらいが、一般社会から逸脱した不健全で正常な感覚だと思う。

さて、モルカンパイソン。
余りに大量に流通し、どこかしら評価が低くなっている感のある不遇のニシキヘビである。何より性格が荒い個体が多いし、ベビーサイズでもワイルドらしい汚らしさが目立つのが評価を低くしている要因かもしれない。色彩や斑紋に関して、やたらと種内多型が多く、綺麗な個体は初めから綺麗だが、汚ぇなぁという個体はそれなりに飼い込んでやらないと化けないから、飼育者を選ぶ蛇かもしれない。所謂バリバリのゴールドスクラブが好まれるが、小さいうちわりかし小汚い、黒っぽい個体が化ける場合もあるし、ある程度発色して「さぁこれから!」という個体が結局そのある程度止まりで終わってしまうこともある。気温や気分で発色具合も変わってくるので、一概に個体を評価するのは難しい。斑紋もスポットやらストライプ、パターンレスと大きく分けて3つ、細かく分けるとそれこそ百花繚乱の様を見せる。
中々流通せず、アメコンファンを待ち侘びさせるものにモルカンのアネリ個体がある。シルバースクラブとでも呼べる、非常にストイックで渋みのある変異で、ちょうどホンハブの金ハブ銀ハブを彷彿させる。アネリの中で最も美しく感じるのは、その模様の妙が楽しめるスポットタイプの個体である。特に体後半部から尾部にかかる虎柄の部位がアネリになるとこの上なく美しい。パターンレスも小さなうちは何処か頼りないが、成長すると重厚になり、人を寄せ付けぬような雰囲気を纏う。ストライプはアネリの場合はやや単調になりがちで、こちらは素直にゴールドタイプが楽しめよう。
様々な変異があるモルカンだが、中には写真の個体のように青銅色とも呼べる色彩のものも見られる。こうしたタイプは幼蛇のうちは「ブラック」などと呼ばれるが、この種の特徴として成長するに従って体色はやや明るくなる傾向があるので、太さが親指を超えた頃にはメラニンに隠されたその輝くブロンズ色が発色してくる。虹彩に色を見ればやや色味が見て取れるので、純然なアネリではなく、また異なった変異個体と思われる。
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テーマ:生き物の写真 - ジャンル:写真
- 2013/04/03(水) 01:13:25|
- ボア・パイソン Boas and Pythons
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オーエンペリ?チルドレンパイソンの巨大版だろ。
そんな風に思っていた時期が、私にもありました‥‥。
まぁ顔つきは全然違いますが体の模様が似ていたので(笑)。
オーエンペリが売っているのは見たことないですが、そもそも生息域がものすごく狭いんですよね。
ただ、昨今あれだけ出回っているジャングルカーペットも生息域が狭いのを考えると、
オーエンペリも出回っていてもいいのにと思ってしまいます。
モルカンのシルバータイプは渋くていいですね。
一時期かなり惹かれて購入を考えたことがありました。
- URL |
- 2013/04/03(水) 20:34:52 |
- くりいわ #dS5vVngc
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皆若い時があったのです。
僕も若い頃は「ハルマヘラ?なんかよくわからんアメジストだろ?」ってホザイテいたり…当時友人のショップが3m近い個体を仕入れて、もう友人は「%&)&')GH(&76TUOHH"!!」みたいになっていましたが、僕は「でかくていらん」と不遜なことを吐いていました。今なら飛び降り自殺レベルで欲しい。
オーエンペリは分布と保護状況から流通しちゃいけない蛇かもしれません。勿論人が持っていれば嫉妬の業火で身を焦がすのですが。ジャマイカボアなんかも同じ。
モルカンのほんとのシルバー(アネリ)はここ最近ほんとに出回りません。あれほどノーマルはいるのになぁ、と思います。
- URL |
- 2013/04/03(水) 22:55:25 |
- 化野 #-
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