
クロボシウミヘビ
Hydrophis ornatus maresinensis「要は白黒が好きなのである」
と、のっけからなんなんなんだと思われるムキがあるかもしれないが、これは個人の趣味思考なのだから致し方ない。東京グランギニョルの主幹であり、一時期は動物堂の店主であった、かの飴屋法水氏の名著「君は動物(ケダモノ)と暮らせるか?」の中に「黄金のものさしを持て」という光芒を放つ名文句が登場するのだが、この黄金の物差しという概念は趣味人たるもの心に常に付帯しておかなければならないものだ。
要は貴方の心の本質は何処に帰着するかを見極めることである。それは育ってきた環境かもしれないし、生来生まれ持ってしまった感覚かもしれない。しかし、どんな人にも、その人独自の嗜好性があるもので、それを自覚することで外を見る目は変わってくる。この年になって思うが、人それぞれの方向性なんてものはすでに生まれてきた頃からボンヤリと決まっていて、何らかの具体性を持ってくる思春期以降にはおいそれと変わることはないものだ。
僕なんてのは一時期体育会系の部活に入っていたりしたものだが、本質が文化系であったようで、やはり違和感は感じたし、春風高校的なリベラルな雰囲気で群雄割拠できる方が心落ち着いた。
爬虫類の嗜好にしても、初めは強烈な種類に目を向け、巨大種や、美麗種、ベタベタに馴れるペット的なもの、色々と目移りし、買いもしたし、扱ってきたが、最近ハタと立ち止まって俯瞰してみると、どうも僕の嗜好というのはいささか地味で、それでいて己の存在感を静かに主張するものであるような種が多いような気がしてきた。
その代表格がアマガサヘビである。このヘビはコブラ科に属し強烈な神経毒を有し、東南アジアの国々で多くの死傷者を出している恐ろしい毒蛇の一角である。そんな凶悪な毒蛇が好きなのだから、蛇好きの中でも相当のファンキッシュな野郎だろうと思われるかもしれない。しかし、待ってほしい。アマガサヘビを実見したことはおありだろうか。
かのヘビは、話に聞くほど邪悪なものではない。たしかに毒性は強いかもしれぬが、その見た目は第一に地味である。ほぼ白黒のツートンカラー。マルオアマガサという黄色にキメたブルース・リー的な奴はいるかもしれないが、その他の連中といえばバンドの幅、入り数は違えど一様に葬式色である。また性質もズンドコと攻撃してくるようなものでなく、あくまで専守防衛。よほど追いつめられぬ限り攻撃に転じてくることはない。
しかし、その毒性たるやwikipediaには「人の致死量はわずか2-3mgで、針のようなものの先端に毒をつけて刺すだけで大人も死に至らしめる」とある。どえらいことである。
これほどの力をもってしても、あくまで地味に生きているのである(いや、本人たちがどう思っているかは知らないが)。こうした姿勢が白黒に込められていて、僕はそれに共感し、黄金の物差しを当てはめるのである。ウミヘビもまぁそんな感じなので、同じく好きなのである。そして、それらに擬態する連中も一様に白黒の殉教者であると思うので好きになるのである。残念な点は、僕が白黒の服なんて着ても、よくわからない楳図かずおのようにしかならないことである。
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テーマ:生き物の写真 - ジャンル:写真
- 2012/09/08(土) 01:04:03|
- ウミヘビ Sea snakes
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| コメント:3
世界中の国立公園で働いたレンジャー曰く’砂漠で生まれた人間は砂漠に帰るし、海で育った人間もいつかは海に帰る’との事でした。
先ほどG-mailにメール送りましたので、また確認お願いします。
- URL |
- 2012/09/12(水) 21:57:06 |
- Nyandful #-
- [ 編集 ]
だいぶ昔(中1)県内西部のアカウミガメ産卵場所でセグロウミヘビの死体を拾ったことあるのですがこっちまで流れてくるもんなんですかね…
県レッドデータの改正には報告しませんでしたが…
- URL |
- 2012/09/14(金) 21:59:46 |
- こぺんた #-
- [ 編集 ]
>こぺんたさん
遅返申し訳ない!
セグロ!貴君は凄いなぁ。本当に高校生なのだろうか。福岡にはもう一件セグロの漂着があったらしいけど、それも個人蔵ということで表には出てきてはいませんね。
まぁ、海洋性のヘビなので、レッドデータには無縁のヘビとは思いますが、一応記録ということで何処かには残した方が良いかもしれません。
- URL |
- 2012/10/16(火) 21:59:14 |
- 化野 #-
- [ 編集 ]