
奄美諸島のハブというのは実質沖縄諸島におけるハブ、すなわち
Protobothrops flavoviridisとは別種と言われ、将来的には新種として記載されることが予想される。たしかハブ自体の記載は渡嘉敷島の個体がタイプ標本となっているため、沖縄のものはそのままフラボーの種小名が当てられるだろう。ちなみにこの種小名はFlavoが金色で、viridisは緑色と、どっちも色を表す。緑?という感じだが、聞いた話によると渡嘉敷島の個体はどことなく緑がかった黄色をしているという。
写真の個体は奄美大島の個体だが、黄色味はあまり無い。銀ハブ、とまではいかないものの(銀ハブはある種のアネリと考えられ、眼球の色も黄色味が失われている)黄色と表現するにはいささか色味がなさすぎる。奄美ではこのような色彩のものが少なくなく、また模様も大柄のものが多いので、慣れればパッと見で奄美か沖縄のものかは判断がつく。

ちなみに沖縄産はこちら。
この能力がつくと、那覇空港で売られているフルボディ入りのハブ酒のハブの大半が奄美のものだと気づくだろう。小さいものの中にはヒメハブやサキシマハブが入っていることもあるが、1mを越すような大きなものの場合大抵が奄美産と思われる個体だ。
これは沖縄本島でハブが商業流通に適さないほど見られなくなっているということで、僕もハブ目的でフィールドへ撮影に出かけても見つからない事がままある。奄美だとまだまだハブの生息数は多いようだが、その理由は奄美に訪れてみると良く解る。もう周りが森だらけなのだ。森の合間にちょこちょこと町がある感じで、一番大きな名瀬市においても市街地からちょっと離れるともう森が広がっている。
ただし、町に近い森ではマングースが跳梁跋扈しているので、環境が良好に保たれているような場所でもほとんどイキモノが見られない。いかにマングースといえど、さすがに大きなハブを野生下で襲うような事は無いだろうが、仔ハブならば良い餌となっているだろう。マングース+開発の手が加われば加速度的に生き物の個体数または種類数が減っていくのは明白で、沖縄本島ではそういった場所はいくらでもある。
ハブというのは怖ろしい存在だが、それが減少しているということはもっと怖ろしいことになるという事を考えさせられる。

写真の個体はすぐに標本にしたが、違法でも合法でも生きた状態でこの様な強烈な毒蛇を身近に置くことはかなりおすすめ出来ない。意味合いは異なるが「手に取るな やはり野に置け 蓮華草」なのである。
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- 2008/05/06(火) 23:42:24|
- ホンハブ Protobothrops flavoviridis
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