
ニホンマムシ
なんだか今年は国際生物多様性年らしいです。生物多様性なんて常々大事、とうか、それなきゃ僕ら生きていけないよぅと無意識に思うもんなんですが、最近はそういう意識が希薄で、わざわざそうした標語を掲げて見かけだけでもアピールしていく必要があります。
生態系というのは養老孟司氏が言うところの「システム」です。千石先生も、地球の生態系を飛行中の飛行機と表現することがあります。生物多様性というのはこのシステムを構築するひとつひとつの部品を指します。飛行機の例でいえば、ネジ1本を無くしたところで、飛行には影響ないでしょう。しかし、それが2本、3本、数百本…と無くしていけばどうなるか。さらに、そのネジというのは、無くしてしまってからは今の我々には復元不可能な代物でもあります。それ故、生物多様性というのは、とりあえず、無意識的にも自衛本能として大事ではないかと意識するものでしょう。
しかし、このシステムばかり声高に語っても、あんまり魅力は無いように思えます。生態系大事!生物多様性守ろー!と叫ぶより、この生き物素敵!とアピールする方がより印象は強いでしょう。そもそもツールを知らずにシステムだけ語られても、どこかそれを語る人の言葉は空疎に感じるはずです。
自然保護を叫ぶ人は最近老若男女すべてに多いと思いますが、たとえば自然保護活動をしている人に生き物の話を振っても、概観だけのどこかで見てきたような、一般化されたつまらない話だけされるとこが多いように感じます。それは生物系の大学の自然保護系のサークルの人たちも然りで、そういう人たちは生き物好きというか活動好きなだけな場合が多いようです。
それよりか、自然から生き物を搾取する様な生物屋の方が生物多様性の本質や、即自的にその消失に危機感を覚えることが多いと思います。生き物を採集することに顔をしかめることが多いのが今日です。さらに昆虫標本のように殺すのを前提とした捕獲は、虫を殺すことが半ば仕事みたいな年代の小学校などでも歓迎されないとも聞きます。これはちょっと狂気の沙汰です。生き物を捕まえ、飼い、殺し、調べることで生物多様性の芽というものは培われて行くと思います。勿論過剰すぎる捕獲や商業目的全面の生物の利用は控えなけらばならないものですが、それ以前に自然観察が文字通り「観察=見るだけ」という風潮は生物多様性の意識を低下させるだけのような気がします。
また、自然保護思想の強い人でも、写真のような毒蛇が身近にいることを快く思う人はあまり多くないでしょう。自然は別に心やさしい、癒しの存在ではありません。森に行けば虫に刺され、海に行けば毒生物に気を遣わなければなりません。それら危険や厄介な要素を排した自然はも最早自然ではなく、単に自然物を使ったディズニーランドでしょう。危険や美しさ、様々な存在の多様性こそが自然であり、生物多様性の意味であると思います。
生物多様性の大事さを解く人は増えて行くかと思いますが、その言葉の根底には生物種からの背景があるか、それともシステムだけを語っているのか、それを見極める必要があるでしょう。
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テーマ:生き物の写真 - ジャンル:写真
- 2010/10/11(月) 21:16:28|
- クサリヘビ Vipers
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| コメント:7
まさに書かれている通りですね。最近は始めからファインダー越しに『観察』しただけでそんな事を語る輩が増えた気がします。自分で探して捕獲して、飼育し、捏ねくり返して、時には殺し、ついつい無駄に殺して反省し笑、をしないとやはり生物の本質には近付けないと思います。まあ誰彼にも生物屋になれというのは無理ですが(苦笑)
学部生時代は隣の自保研サークルは常に敵でしたねぇ笑
そう言えばCop10行こうか迷ったんですが、暇が無かった…
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- 2010/10/12(火) 01:58:59 |
- acraeoides #aCXfCcIc
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耳が痛くなりますね苦笑
最近はようやく標本も採り始めましたけどもやっぱり今まで採っていなかったことに凄く後悔しています。
写真だけだと形態観察も何もあったもんじゃないですね。写真も大切なんでしょうけど、どうしても写真を撮ることに夢中になってしまって細かい観察が全然できておりませんでした。
そういえば自保研はなんか施設の紹介?のようなことをしていただけでしたねぇ。生きものの話をする雰囲気が皆無でした。
- URL |
- 2010/10/12(火) 02:19:21 |
- ジーク #-
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こっちはそんな自然愛護家きどりのヒッピーみたいなのが溢れております。あぁメンドクせぇ。
正直いうとそんな「気取り」な人たちでも関心がないよりはマシだと思いますがやはり深く知ってこそこの世界は楽しいですからね。先日会った野鳥保護をしている人なんかは目・科・属の順番を知りませんでした笑(つまり分類に関して何も知らんのです)。
かと言って飼育している人にもかっこいいのを飼えればいい、という人も多いのも事実で多様性等に対する意識を持ってもらうのは簡単ではないのでしょうね。それこそ小等教育の段階でもないと・・。
- URL |
- 2010/10/12(火) 16:59:47 |
- Nyandful #-
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どこかで書いてたかもしれませんが、要はバランスの問題なんですよね。
飛行機がわかりやすいからそれをまた例に出すと、部品であるネジに注目しているのが生物屋さんで、その素材や形の特異性、どこにハマるのか等、どんどんそこから派生して、飛行機が見えてくるのだと思います。逆に飛行機から入ると、ネジが金属なのかプラスティックなのかもわからないような人が出てくるんでしょう。 Nyandful さんがおっしゃっているように分類がわからないというのはそういうことなんだと思います。
勿論部品にばかり固執し、「このネジかっこいいから、こればっかり集めてるぜ!」てな感じなのはただのコレクターで、別に生物屋でも何でもない場合も多いです。
ネジから飛行機が見えてこないとそれに関わっている意味はないですし、逆もまた然りだと思います。
最近は概観ばかり見て、肝心の中身が空疎な状況が目立つような気がして、これを書きました。とりあえず僕は一番の興味の対象である爬虫類、蛇を使って自然って面白いね!素敵だね!とアピールしていけたらと思います。
- URL |
- 2010/10/12(火) 21:02:11 |
- 化野 #-
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化野さんの写真には、「全体性」みたいなものが見えますよね。
常に、自然のフィールドの中に居る生き物が写されているので好きです。
エコとか自然保護という言葉には、私もあまり興味がありませんが、そんな事を大げさに騒ぐより、自然の中で生きている生物たちを好きになることで、「好きなものを守りたい」とか「もっと元気な、伸び伸びとした姿を見たい」とか、そういう分かり易い繋がり方で良いんではないだろうか?と、思います。
ただ、私なんて「観察」なんてほど、大層しっかりと生物やらそれを取り巻く環境を観察している訳ではないので、そういう方々とも50歩100歩かもしれませんw
- URL |
- 2010/10/12(火) 21:27:39 |
- くろたまナイト #-
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ありがとうございます。 最近はあんまりフィールドでしか写真を撮る気になれない(室内撮影の方が最近めんどくさいんです、笑)んですが、寒くなるとそっちが増えるかもしれません。
エコとか色々叫んでもいいんですが、どこに根差した叫びかで、聞く方の評価は変わってると思います。システムが壊れる以前に僕らは単純に一つ一つの生き物が好きなんですから。
- URL |
- 2010/10/15(金) 21:40:31 |
- 化野 #-
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