Agkistrodon taylori先ほど知ったんですが、かのブラジル・サンパウロのブタンタン研究所の一部が火災に見舞われたようです。
僕がかの研究所の存在を知ったのは、小林照幸氏の「完本 毒蛇」という非常に素晴らしいノンフィクション小説の中でした。この本は、ハブの血清研究にその生涯を投じられた元・スネークセンター所長の沢井芳男先生にスポットを当てた半ば伝記的読み物ですが、その作中に出てくる毒蛇たちの(良くも悪くも)生き生きした描写には、本当の蛇好きならば、強い憧憬を覚えずにはいられない感動的な読み物であります。その中で、沢井先生は毒蛇研究の最先端を行く(おそらく現時点でもですが)、ブタンタン研究所に訪れ、当時の所長キーガン氏とのとんでもない対面をいたします。キーガン氏は毒蛇愛にあふれる御仁で、特にキングコブラに対して並々ならぬ情熱を注がれていたようで、娘にその種小名を宛がう程の(キングコブラの学名はOphiophagus hannah)素敵パーソンでございます。キーガン氏は研究所の前身となるサーペンタリウムなるヘビ類の飼育展示および研究施設の発展に寄与され、当時から今に至るまで、日常生活に多大な負荷を与えているブラジルの毒生物の研究に先進的な道筋を示した立役者であります。当然サーペンタリムも、ただ毒蛇の恐ろしさ、禍々しさを伝えるだけでなく、蛇の持つ生物的な美しさを伝えたり、建設的に人類がこうした自然にどう向き合っていくかを模索するような素晴らしい施設であったようです。
そんな物語を読んで以来、僕もブタンタン研究所には強い憧憬を抱いていたのですが、幸いなことに3年前に国際会議でブラジルに渡り、当研究所へと訪問できる機会に恵まれました。噂に違わず研究所は素敵な施設で、長年の夢が一つ叶った瞬間でもありました。まぁ、その時の様子は前にビバリウムガイドに書いたんで、読んでくださいませ。

とまぁ、そんな研究所が今回思わぬ形で世間に出たわけで、ニュースでも伝えておりましたが、その焼失というのは世界的な損失だったわけです。
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テーマ:生き物の写真 - ジャンル:写真
- 2010/05/17(月) 22:39:44|
- クサリヘビ Vipers
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| コメント:3
それは残念ですね。
憧れる場所というのは生き物好きならあると思います。施設としては、南米ならコスタリカのインビオINBioを訪れてみたいです。
BMNHは一昨年念願が叶いました^^
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- 2010/05/17(月) 23:36:34 |
- acraeoides #aCXfCcIc
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コメントした後でニュース読んだんですが、標本がかなり焼けたみたいで、これはショックですね…物凄い衝撃を受けました。何と言う損失だろう…タイプ標本なんかもあったのでしょうなあ。
- URL |
- 2010/05/18(火) 00:07:00 |
- acraeoides #aCXfCcIc
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もう、とんでもない損失でしょううね。しかも、標本はエタ浸けだったでしょうから、より火のまわりは良かったでしょう。液浸標本ってそういう危険性がありますねぇ。
- URL |
- 2010/05/20(木) 20:33:14 |
- 化野 #-
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