日本へは、このグループはこれまでに4,5種が入ってきているものと思いますが、キオビ S. citrinus やシロオビS. betsileanus などの、よほど特徴的なものならばとりあえず絵合わせ的な同定で判断がつきますが、写真の個体のように、明るめの地色に黒バンドが入るタイプのものは少々混乱があるかと思います。少なくとも似たような外見をしているものは以下の4種がいるようで、今のところ国内では猫も杓子もガイマード S. gaimardi にしとけ、というような風潮が見られる気がします。
S. carleti S. gaimardi S. granuliceps S. pseudogranuliceps
これら類似種の同定には、クリーパーで乙部洋平氏も指摘しているように、腹板数と尾下板数のような形質を調べることが大事で、それに加えて、バンド数や体色などを見ていくのがよいかと思います。最もよい文献は Vences et al. (2004) によるシベットヘビ属のレビューで、これはネットでフリーで落とせますし、わかりやすい写真も掲載されているため、シベットヘビの同定には重宝すると思います。 論文によると、カーレット S. carleti とガイマードは、このグループ内でも非常に似ている2種ですが、現地での両者の分布域はかなり隔たりがありようですし、腹板数が重ならない(カーレットで252-258、ガイマードで266-284)ということで見分けはつくようです。ツブガシラ(でしたっけ和名?)S. granuliceps と二セツブガシラ S. pseudogranuliceps は腹板数の少なさ(前者が224-245、校舎が220-239)と、背面の模様の細かさから先の2種とは比較的容易に区別はつくようですが、こいの2つの同定というのはなかなか大変なようです。 写真の個体は、とりあえず画像だけ見て、上に挙げた4種とはどうも雰囲気が異なるという、非常に第6感的・絵合わせ的発想で興味をそそられた個体で、どうしても実物を手に取って見たくなり、ショップの方にに少々無理してもらって送って頂きました。
早速来たものをみると、雰囲気からツブガシラの幼蛇に似てはいるものの、やはりそれとは異なり、ツブガシラとガイマードの中間に見えます。そこで、コピーをとって腹板を数えて見ますと238枚。これではカーレット・ガイマードとは20枚以上異なりますから、さすがに変異のレンジともいえない感じ。では、ツブガシラとはどうなのかというと、一応腹板数のレンジ(224-245)には収まるものの、背面のパターンがかなり異なります。ここで、先に紹介した Vences et al. (2004) をよく読むと、ツブガシラと同所的に分布するガイマードに似た未記載種の記述があります。採集地はパンサーカメレオンの産地で有名なアンバンジャで、2000年に1個体のみゲットされています。こいつの腹板数を見て見るとジャスト238枚! こいつでね!?とは思ったものの、論文中の未記載種の写真を見ると、やはり斑紋パターンが異なるのですよ。写真の個体は黒バンドがしっかりとサイドまで回っていて、腹板のすぐ上まで接しているのですが、論文中の未記載種ではちょうど鞍型状に黒い斑紋が入っていました。また、腹面の模様に関して、写真の個体は模様が入らず、きれいな乳白色をしているのですが、未記載種には "dirty spotted "とか書かれているじゃありませんか。まぁ、これは1個体のみの記述なので、それこそ個体差や齢差がかかわってくるのかもしれません。個人的にはツブガシラの変異かもしれないと思って戦々恐々なんですが(ツブガシラはアダルトになると非常に不細工になるのです)、今のところ非常に判断が付き辛いので、sp.扱いで飼育しております。