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モラトリアムは終焉を告げ

ホンハブ

ホンハブ Protobothrops flavoviridis
 
 ホンハブの本懐は,雨の日にあるのかもしれない.しとどに濡れたその体躯は,晴れた日に見る乾いた黄色でなく,艶やかな煌めきを持って,絢爛な装飾美を主張しているように見える.

 そんなホンハブの美しさを撮影しようとするのは,中々に骨の折れる作業で,雨が降りやまなければ心も折れる.写真のハブとは,実に数カ月ぶりの対面と相成ったわけであるが,その日も雨は激しく,雨足は時間が経つにつれ激しさを増すばかりであった.
 とある林道に差し掛かった時に,これまで現れた数多のヒバァやヒメハブとはまるで異なる輝きをもって,巨大な体躯のハブが道を横切って行った.雨は相変わらず激しかったが,その美しさに魅了され,また久々の邂逅であることも相まって,傘もささず,すぐさま車を飛び出した.

 雨に濡れたそのハブは,眩いばかりに地色を発色させ,突然の闖入者に臆することなく悠然と構えを作り,僕を凝視していた.沖縄本島のハブは,そう矢鱈に咬みついてくるものではない.特に十数年の歳月を過ごしているであろう,大型の個体は,ある程度の余裕を持って咬蛇姿勢を取り,可能な限り睨みだけでその場をやり過ごそうとする.無駄に飛びかかってくるのは奄美諸島の個体群で,一度外敵の居る状況に陥れば,己の危険性を過剰に誇示しようとしているかの如く打ちかかってくる.

 目の前にいるハブは,それとは違い,橙色の光彩を電灯の灯りに煌々と反射させて,凝とこちらを見据えるだけであった.時折二,三度舌をちらつかせ,こちらの動向を図ってはいるが,それ以外に身じろぎもせず,僕とハブとの距離は緊張感を持って保たれていた.

 ホンハブ

 このまま,この恍惚な時間が続けば言うことはないのだが,ハブと違って僕は雨に濡れ続けると風邪をひく.この刹那な出会いは情景として心に記憶しておけばいいものの,俗物である僕は物証としての記憶を持ちたがる.つまりは写真が撮りたいのだ.
 さすがにこの豪雨の中,カメラを持ち出すのは容易ではない.傘をさしながらの撮影というのも,無毒蛇や小型の毒蛇ならば可能であるが,今対峙するのは僕の身長に迫る巨大なハブである.状況は中々に厳しい.

 それでも,やはり物欲というか所有欲が勝って,僕は車にカメラを取りに行った.開いた傘を体に申し訳程度に固定させ,両手が何とか使えるようにした.ハブはまだその場におり,奇妙な風体に身を窶した僕を,相変わらず鋭い眼差しで見つめていた. 

 カメラを起動させ,ハブに近づく.先ほどよりずっと距離を縮めてハブに向かう.これまで保たれていた均衡は破られ,ハブは身を固め,密なとぐろを巻き始める.これは本格的な攻撃の前段階だ.首にしなりをつけ,ピットで正確に僕の居る方向に狙いをつける.これ以上近づけば,次の瞬間には全身の筋肉を躍動させ,その毒牙を打ちこんでくるだろう.そのトリガーを引かぬよう,ギリギリのラインに踏みとどまり,シャッターを押す.

ホンハブ

 雨は一向に止む気配がない.

 時折強い横風が吹くため,体に固定していた傘も外れる.僕はもとより,カメラの方に直接雨が降りかかる.ハブの方は,相変わらず咬蛇姿勢を保っているが,いまだ打ちかかっては来ず,心なしか緊張が収まってきているようにも見える.油断は禁物だが,こうなると,慎重に緩慢な動きで接すれば,よりハブ自体に近づける.これは説明するのは難しいのだが,いくつかハブを撮影していると,咬む咬まないの動向が,若干把握できてくるように思う.勿論それは個人の妄想の類に他ならないかもしれないが,今の時点でこのハブは咬んでこないように思った.
 それ故,可能な限り接近する。レンズとハブとの距離は,握り拳にも満たないほどに縮まった.ハブは動かない.シャッターを押す.

 突然カメラのディスプレイが暗転した.僕はハブと接するときは,安全のためファインダーを覗かず,ライブビューを見ることで撮影しているのだが,突然その画面が暗くなった.ハブから離れ,カメラを確認する.動かない.電源を入れ直す.起動は,した.しかし,シャッターが下りない.いくつかのボタンも反応しない.

 壊れたのだ.

 とうとう僕のカメラは壊れてしまった.

 思えば過酷な働きをさせてきた.今までよく壊れないな,と思う状況が何度もあった.それが今壊れた.先ほどまで雨に晒されていたのだ.普通壊れるだろう.ハブに夢中になり過ぎて,カメラの置かれている状況を無視していた.それでもこのカメラは,壊れる直前まで一生懸命働いてくれていた.今回のハブの写真は,特に自分で満足がいくものであった.たぶん,このカメラであるからこそ撮れた画であるとも思う.

 車に戻る.自分を拭く前に,まずカメラを丁寧に拭いてやった.ふと外を見れば,かのハブはその場からいなくなっていた.撮影に付き合ってくれてありがとう,と心の中で感謝する.
 カメラは相変わらず,ディスプレイに画を映し出すだけで,すべてのボタンが機能しない.カメラにも,撮影に付き合ってくれてありがとう,と心の中で感謝する.同時に深い懺悔を捧げる.

 人からよく,どうやって撮影しているのかを聞かれるが,僕の撮影法は中々に変則的で,このカメラであるからこそ編み出せた,苦肉の方法であると思う.逆にこのカメラであるから,少し人とは違った撮影が出来たのだとも思う.そのおかげで,僕の写真のいくつかは評価されたし,写真を通じてたくさんの素晴らしい人たちとも出会うことが出来た.

 今後は,新しいカメラを買うことになるだろう.思い切ってデジタル一眼を手にするかもしれない.何となく今まで一眼に手を出さなかったのは,このカメラがあったからで,こうして今まで働いてくれているのだし,可能な限りこいつで勝負したかったというのがあって,周りが次々と一眼を購入する中で,頑なにこいつを使い続けてきた.このカメラである故の安心感というものもあって,この甘んじた状況を手放したくないというのも勿論あった.

 しかし,今後は状況を変化させないといけないだろう.とりあえず,写真撮影というのは次の段階に進むことになると思う.その状況がそのまま僕の今の状況でもあるので,カメラの死は,如実にモラトリアムの終焉を感じさせた.

 まだまだ表に出していないこのカメラの仕事というのはあるから,今後もしばらくはそうした写真を出すとは思う.ただ,いつまでもそれに縋ってはいられないので,新しい道を模索する際には,閲覧者の方々には,また新たにお付き合いさせていただきたい.それなりに見る人には見られているブログなので,期待を裏切らないよう,精進を続けようと思う. 

 最後に.FZ-50,今まで色々とありがとう.
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テーマ:生き物の写真 - ジャンル:写真

  1. 2010/02/18(木) 22:39:10|
  2. ホンハブ Protobothrops flavoviridis
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

とうとうFZ-50が・・
言わば僕と僕の愛機との出会いもその化野さんのFZ-50があったからなワケで・・。

僕はもう少しFZ-50と共にがんばっていきたいと思います。
  1. URL |
  2. 2010/02/20(土) 22:13:38 |
  3. Nyandful #-
  4. [ 編集 ]

Nyandful さんには是非とも素敵機種FZ-50で豪州ハペを撮り尽くしてください。無茶に扱っても僕の下で4年は持ちましたから、笑。
  1. URL |
  2. 2010/02/23(火) 00:12:54 |
  3. #-
  4. [ 編集 ]

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Author:アダシノレン
ノーダリニッチ島へ

修士[理学]


Mail : アルファベット小文字で,b.candidus@gmail.com



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使用カメラ : LUMIX DMC-FZ50
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