
さて、昨日言っていたオオカミヘビが脱皮いたしました。
う~ん…
fasciatus !?
以前載せた個体がコレ↓ですが、コレのでっかくなった奴だべなぁ。コイツの3倍くらいのボリュームがありやす。

この写真はうちに来て最初の頃に撮ったものですが、数度の脱皮を繰り返し白帯の部分がほんのりとピンク色に染まってまいりました。色合いから言えばバラマダラにかなり近い。

そこで、新しい混迷君ですが「アカオビオオカミヘビ」のインボイスのように、かなり白帯の部分がピンク色に染まっております。中々写真でその色合いを表現するのは困難なんですが、現物を見れば「まぁ、赤っぽいね」という印象を受けることは保証します。雰囲気として、白帯の下にある筋肉が透けて見えている感じでしょうか。兎に角、何だか肉々しい。肌の質感として、対馬産のアカマダラに通じるものがあります。あんましこうしたところに注目して見る人はいないと思いますし、そもそもマダラヘビ・オオカミヘビが好きな人なんて二桁いくかどうかの世界だと思うので、かなり共感を得られにくい表現ですが、似てるんです。
おそらくバラマダラも似たような質感と雰囲気じゃないかと予想しているんですが、ほんとにこのあたり手に入れんとなぁ。同じく、多分、確実な
Dinodon septentrionale が売りに出されていますので、これも是非とも手に入れたい。結局混迷君はセプテンじゃなかったわけだし。
ただし、この個体たちはセプテンでもなければ、当然バイカダでもないわけですが、果たして
L. fasciatus で妥当なのかと言えば、これは断言が難しいところです。まずネット情報として Reptile s Database ( http://jcvi.org/reptiles/species.php?genus=Lycodon&species=fasciatus ) を参考にしたわけですが、ここで2枚の写真が掲載されています。取りあえず模様を抜きにしたら1枚目のものに関しては雰囲気は超似ています。プロポーションや顔つきは酷似しますし、模様の変異は恐らく地域的もしくは個体差の変異の範疇なのかなぁと思えます。しかし、2枚目はどうですか!?
これはちょっと違いすぎるんでないかい?オオカミヘビの場合若い個体は割と帯がはっきりする傾向があるとしても、この違いはとても齢差の範疇に納まるものであるようには思えません。分布を見てもらえば分かるとおり東南アジアに広く分布しているわけで、当然地域変異があることは予想できますし、隠蔽種が含まれる可能性も十分に考えられますが、ちょっと情報が混迷しすぎでないかい、とも思うわけです。取りあえず同じReptiles Database に
Dinodon septentrionalis としてページに掲載されている写真の個体が僕の飼育するこの2個体に一番近いと思われます。
ちなみに
Dinodon の性は中性であり、種小名は septentrionale とするのが正しいようですが、なぜか ‐nalis と表記されている場合が目立ちます(参考文献:鳥羽(1999))。セプテンに関しましても、かなり情報が錯綜し、この
fasciatus 系と混同する場合やバイカダの幼蛇と混同される場合が多いのですが、現物はかなり特徴的なヘビといえます。最も識別しやすい写真は Russian Journal of Herpetology のOrlovら(2004)の
Dinodon meridionale に関する論文に掲載されているもので、成蛇、幼蛇ともに標本写真が見ることができます。前にも書いたと思いますがチェーンキングっぽい模様パターンです。
もうひとつ分かりやすい写真として、度々引用する中国蛇類(2006)でも成蛇の標本写真が掲載されています。とまぁ、セプテンに関しましてはかなりスッキリしているんですが、同書の
fasciatus に関してはムチャクチャで、バイカダの生態写真とおそらくセプテンの標本写真(おそらくとしたのは、腹板にバンド模様が入る点が気になったから)が掲載されているという惨事です。他にもタイのヘビ図鑑には
L. aulicus が
fasciatus として載っていたり、中国語のサイトでも多くがバイカダを
fasciatus として載せています(その逆もある様ですが)。もうこれは原記載を見なきゃワケワカメという状況ですが、記載が古く、原著論文多分手に入れにくいんですよね。そして、タイプ標本に関してはどうも大英博物館にあるようなのですが、これもちょいと見に行くわけにはいかんですよ。だた、一筋の光明で、もしかしたらばいかださん関係で、この標本の写真がゲットできるかも知れません。
まぁ、それまでは結局のところ真相は藪の中で、とりあえず
fasciatus?として混迷なるまま飼育を続けてまいります。あ、飼育はヤモリさえ与え続けられれば容易っす。
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テーマ:生き物の写真 - ジャンル:写真
- 2009/11/03(火) 22:02:47|
- Dinodon/Lycodon
-
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-
| コメント:4
二桁の中の一人です(^^)
本当だ、肉々しい色合いって感じしますね。
実物を見たら印象だいぶ違う赤なんでしょうけれども。。
種が確実なものを数見て目を慣らすのが間違いないのでしょうけれども、
それが難しいのがなんとも…ですね。
大英博物館の件は何とかなりそうな気もするんですけどね~。
ちょっと彼とのやり取りの中で少し作戦を思いついたので、あとでメールしておきますね。
- URL |
- 2009/11/03(火) 23:21:35 |
- ばいかだ #-
- [ 編集 ]
おありがとうございます。
確かに数見るのが良いんですが、とりあえず国内には数えるほどしか入荷はしてないでしょうし、海外に見に行ってもそう簡単に見られるもんではありませんからねぇ。サキシママダラのように20も30も一度に見れれば最高なんですが、笑。ほそぼそとやっていくしか無いのです。
- URL |
- 2009/11/04(水) 15:40:01 |
- 化野 #-
- [ 編集 ]
既にご存知かもしれませんが、古い文献ならもしかしたらここで入手できるかもしれないですよ。
http://www.animalbase.de/
http://www.biodiversitylibrary.org/Default.aspx
http://www.archive.org/details/texts
ところで、分類をやっていると、かなり研究が進んでいると言われている分類群でも、多くの混乱や分からんことが沢山出てきますよね。爬虫類は昆虫よりも標本が集まらなさそうなので大変ですね。
古い原記載は内容がアレな場合が多いので、シノニムリストを作る以外はあんまり役に立たないですし、やっぱりタイプ標本を見たいですよね。ヨーロッパ人が羨ましいです。
- URL |
- 2009/11/04(水) 18:00:16 |
- acraeoides #aCXfCcIc
- [ 編集 ]
わぁ!
コレはありがとうございます!biodiversitylibraryは知らなかったんですが、これは素晴らしいです。しかも、保存できるとか至れり尽くせりですね。
結局のところ僕は分類屋じゃなくて、ちょっとここらへんの検索は疎かったです。今晩は眠れそうにありません、笑。
確かに昔の記載って、今の記載論文から考えるとええっ!ってものが多いですね。それ故か大量にシノニムリストが並ぶ羽目になります。爬虫類はまだマシで、昆虫の世界はちょっともうとんでもないことになっているんでしょうね。お察しします。
- URL |
- 2009/11/04(水) 19:26:18 |
- 化野 #-
- [ 編集 ]