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Lycodon fasciatus … ?

Lycodon fasciatus ?

Lycodon fasciatus ???

 ちょっと前から我が家には結構謎のヘビがいるんですが、コレの正体がいまいち掴みきれないのです。

 この個体はまずショップでは Lycodon septentrionalis として販売されていました。まぁ、、現在 L. septentrionalis Dinodon 属とされることが多いですし、僕自身これを支持したいと思うので、セプテン君に関しては今後 Dinodon septentrionale としていくこととします。確か以前にキイロマダラの記事のところでも Dinodon に含めていたと思いますし。

で、セプテンなんですが、僕の知りうる文献 (中国蛇類 2006) の限り、セプテンはまず斑紋パターンやプロポーションがかなり明確に L.fasciatus とは異なります。丸みを帯びた吻端に、Dinodon らしい比較的がっしりした体格と、体に入るバンドパターンはチェーンキング Lampropeltis getula getula のように細い白色環であり、バイカダグループのようにH型の白色環にはならないように思えます。

 ただし、セプテンを学名で検索にかけると、非常に多くのセプテンモドキが出現します。Reptiles Databaseなど比較的信頼性の高いサイトなどでも、ここでセプテンの画像が出てくるのですが、僕にはこいつがどうしてもセプテンには見えません。というか上の画像の個体と非常に類似しています。この時点で、このサイトで完結してしまえば写真の個体は「あぁ、セプテンね」となって終りなんですが、ネット上で見られる他の画像や、書籍などからはどうしても Reptiles Database の写真がセプテンではないように思えます。

 では、このセプテンモドキは何なのかと考えると、このヘビに類似したものは次にバイカダ種群が考えられます。ここで言うバイカダ種群とは、まぁ正式な意味合いでの「種群」でなく ruhstrati, fasciatus, subcinctus の似たもの同士の3種とします。この中でまず subsinctus はバンドパターンがだいぶ他と異なるので除外して、ruhstrati と fasciatus で考えていくことにします。

Lycodon ruhstrati ruhstrati

 Lycodon ruhstrati ruhstrati

 僕の家にはタイリクバイカダ Lycodon ruhstrati ruhstrati 、つまりサキシマバイカダの基亜種がいるわけですが、これはかなり形質的に見分けやすいように思います。ただし、これも実際学名で検索をかけると、僕が L. fasciatus と予想している一枚目の写真の個体と類似した個体の写真がワカワカ出てくるんですよね。確かにこの2つは似ている部分も多いですが、顔つき、プロポーション、斑紋を見比べると、どうも L. ruhstrati の中での個体差という以上の差異が感じられ、別種であるという印象を受けます。参考までに横顔を並べてみますが

Lycodon fasciatus ?

Lycodon ruhstrati ruhstrati

まぁぁ、これが同種の蛇とはとても思えません。と、ここで僕が同定根拠としてよく挙げている鱗相について書かないのは、厄介なことにseptentropnale, ruhstrati, fasciatus とでほとんどの鱗数が被っているからです。となると後はDNA、ヘミペニス、頭骨の形状などなどの形質を仔細に検討する必要がありますが、まぁ、お趣味で飼っているものなので、無責任ですが印象論で判断していく事にしています。

 で、先に出した中国蛇類の中ではL. fasciatus の写真はどうなっているかといいますと、生体と標本の写真2点があるのですが、これがまず生体の写真はどうみても L. ruhstrati にしか見えないのですよ。さらには標本の写真は Dinodon septentrionale にしか見えないという混沌の極み。

Lycodon fasciatus ?

そして、Reptile Databaseで L. fasciata の画像を見てみると感覚的にはどうも上の写真の個体はこれに該当しそうなのです。しかし、色彩や、斑紋パターンに差異が見られます。

ここで考えられるのは、L. fasciatus はやたらと分布域が広いということです。
インド、ベトナム、タイ、ラオス、ミャンマー、チベット、そして中国南西部とアジア広域に分布しております。これで地域変異がないとは考えられませんし、おそらく僕の予想では現時点で L. fasciatus にされている地域個体群に中にはいくつか隠蔽種が含まれているもの思われます。そして、結論として僕の飼育する個体は Lycodon fasciatus のどっかの地域個体群であるとしました。

 いまだ Dinodon, Lycodon ついでに Dryocalamus については分類学的混乱多々見られますし、今回の蛇たちのようにいくつかの種に関しては、信頼度の高い同定による画像紹介も少ないと言えるでしょう。まぁ、そこを探っていく楽しさがこうした類の蛇にはあるともいえますし、そこをあれこれ考えるのもこの趣味の醍醐味と言えるでしょう。
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テーマ:爬虫類 - ジャンル:ペット

  1. 2009/07/03(金) 12:11:32|
  2. Dinodon/Lycodon
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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  1. |
  2. 2009/07/03(金) 17:29:41 |
  3. #
  4. [ 編集 ]

深い

すっご興味深く、深く深く読みました。
この上なく面白いですね。
まだ分類が進んでいない地域差ってあるはずですよね。
宮古と八重山のサキシマバイカダでも差があると言われるし…。

謎の個体君はなんだかウミヘビ的イメージですね。
クロガシラみたいな…。
(全くの個人的なイメージですが)
見なれている奴の基亜種だけあって、
タイリクバイカダは落ち着いて見れますね(^^;

ネットの情報は混とんとしていますもんね。
以前、シロマダラを画像検索でググったら
1番目に出てきたのが黒いヤマカガシでした。
  1. URL |
  2. 2009/07/03(金) 17:37:56 |
  3. ばいかだ #-
  4. [ 編集 ]

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