ハブ P. flavoviridis とは同属だが、たぶんパンダとレッサーパンダくらい違う感じのヘビ。実際系統関係を見てやるとサキシマハブはタイワンハブ P. mucrosquamatus に近縁だし、ホンハブは中国にいるジェルドンハブ P. jerdonii に近いとされる。おそらくサキシマハブとホンハブは琉球列島へはそれぞれ全く異なる侵入パターンをしたのだろう。中琉球はかなり早い時期に大陸とは分断されたので、固有の動物相が出来上がり、近縁種を求めると南琉球よりむしろ大陸に分布している種の方が多い。イモリの類やトカゲモドキは南琉球では見られず、いきなり中国に飛ぶ。
しかし、かと思えばナミエガエル Limnonectes namiyei に近いクールガエル L. kuhlii は台湾にいたりするし、リュウキュウカジカ Buergeria japonica は琉球列島のほぼ全域に広がっているし、台湾にもいる。島嶼環境への生物の侵入と分断は、分類群によってまちまちだし、素直に現在言われている地史に反映しない場合も多い。それゆえ生物地理学というのはエキサイティングな学問で、多くの生物屋を魅了しているのだろう。