先日アルバーティスパイソンの資料をいくつか手に入れ、久々に記事でも書こうかなぁと思ってた矢先、奇しくもAll Aboutで星野さんが本種についての記事を書かれていましたね。でも、まぁよし。重複するところはあるかと思いますが、自分のお趣味のブログだもん。好き勝手書きます。そして、好きな蛇なので前回のコブラと打って変わってくだけて書きます。
アルバーティスパイソンはその外部形態、てか顔から英名でWhite-lipped Python、シロクチニシキヘビとも呼ばれています。こうした見た目の特徴から名付けしたほうがその生物の特徴をイメージしやすいのですが、何故かペットシーンでは多くの場合学名に由るアルバーティスパイソンという名称の方がメジャーな気がします。まぁ、名前を呼んだときこっちの方がかっこいいですからね。
アルバーティスという名は18世紀から19世紀にかけて活躍した某海賊王と同じくDの称号を持つイタリアのナチュラリスト・Luigi Maria D'Albertisに献名されたもので、この御仁はこれまで殆どヨーロッパ人が踏破し得なかったニューギニア島に渡り、動植物を採集しつつ、現地人にロケット花火ブチかましたり、番犬代わりにニシキヘビを飼っていたりするような中々ファンキーなおじさんだったようです。ちなみに、こちらの名前を使った英語表記は単にAlbertis PythonとするよりD'Albertis Pythonとする方がより一般的のようです。
名前なんてどうでもいいわい、という意見もあるでしょうが、生物の名称、特に学名などは間違って覚えていてもろくなことはありません。例えばその生物種について調べようと思ったとき、名称が適切でなかった場合引き出てくる情報には恐らく雲泥の差があります。まともな科学論文では何度も校閲があり、そうとうチェックされていますから、学名などが間違って表記されてあることは殆どありません。それゆえ検索をかけてもきちんと出てくる。
このスタートの時点でケッ躓いていたら、欲しかった情報なんて手に入らないわけで、そもそもそうした検索でひっかかる情報などクオリティの低いものである場合が殆んどです。これは飼育系にもかなり影響すると思われます。なので、生物の名称大事にしましょう。まぁ僕もたまに間違ったり、勘違いする事はあるので、その時はこそっとご指摘頂ければと。
で、話は戻りまして、こうしたおじさんの活躍でアルバーティスパイソンはヨーロッパに持ち込まれ記載されたわけですが、当初は
Liasis として記載されたようです。その後結構このパイソンの分類学的ポジションはあっちこっち行って、リングパイソン
Bothrochilus boa と同属の
Bothrochilus 属にされたり、時には
Morelia 属にも置かれたり、
Leiopython の名自体は本種記載年1878年の翌年からHubrecht(1879)によって提唱されているようですが(ただし、その際の種小名は
gracilis )、再びその名が冠され、落ち着くのはKluge(1993)によるもので、この論文では頭骨やその他の外部および内部の121の形態形質を用いて、ニシキヘビの系統関係を推定しています。その結果から、Klugeはアルバーティスパイソンは他のどのニシキヘビ系統とも異なるとして、114年前のシノニムとして抹消された属名を復活させております。
アルバーティスパイソンの属名はこうして
Leiopython としてその後暫く落ち着いてはいたのですが、90年代後半に分子生物学的手法で系統関係を推定する仕事が増えだしてから、再びこのニシキヘビのポジションは揺らぎだしているようです。
中でもLesleyら(2008)が発表した論文では、9属25種のニシキヘビについてミトコンドリアDNAの4領域を用いて、いくつかの系統樹を作成した結果アルバーティスパイソンはリングパイソンと姉妹群を作っていました。この結果から著者らはアルバーティスパイソンを独立の属にしておく必要は無いと考えているようで、
Leiopython の時より、より古く
albertisii の種小名が付けられていた
Bothrochilus 属に含めようと言う意見もあるようです。僕自身ナマでリングパイソンは見たこと無いんですが、雰囲気とか意外に似てるのかしら?
ただし、これにはまだ、議論の余地が残されているようなので、まだ確定してはいませんが将来的には
Leiopython の名が消える可能性も無きにしも非ずといったところでしょうか。千石先生なども単一属への細分化に疑問を持たれ、アクアライフ誌上などで度々コメントしているのを見かけます。
とまあ、この様に結構属間に関しても混乱が見られるニシキヘビですが、種内においてもさらに混乱が見られます。
アルバーティスパイソンは、日本へはペット用にある程度安定した数が入ってきているニシキヘビの一つですが、昔から2つのタイプがあると言われてきていました。
1つはニューギニア島北部から来るタイプで、黒色~深い藍色の頭部とそれとは対照的に黄色から赤黒いボディーを持つノーザンフォーム、もしくはゴールデンとかノーマルとか呼ばれているもの。上の写真2枚がそうですね。
もう一つは、島の南部から来る、全身ほぼ黒色で、頭部とボディーとで色彩の変化が無いサザンフォーム、通称キミカブラックと呼ばれるタイプでして、下の2枚がそうです。この2タイプは色彩以外にもサイズ・性格などにかなりの差があるとされていました。
あ、ちなみにAll Aboutでは「品種」という言葉でが使われていましたが、これらの色彩型は累代飼育の結果作出された遺伝様式が分っている改良品種ではないため、本記事ではとりあえず「タイプと称しています。英語でFormという表記があり、和訳は「品種」とする場合もあるのですが、上述した理由で混乱が生じるかと思い、「~型」とか和訳したほうが適切かと。
で、この2タイプですが、値段設定にもかなり開きがあって、数年前などキミカブラックは高嶺の花。ノーマルが2,3万で買える蛇だったのに対して、平気で10万を越していた記憶があります。最も最近はこのキミカも随分安くなり、馬鹿デカイサイズでなければ段々とノーマルと価格帯が変わらなくなってきてしまっています。値段が下がったのに加えて、このキミカブラックはノーマルに比べ性質的に穏やかなものが多く、でかくなる上にハンドリングも可能な場合が多いため、愛玩用蛇としても脚光を浴び、飼育層が以前に比べ格段に広がっている種類と言えるでしょう。
さて、こうしてペット的に見てもかなりの差があるこの2タイプ。見た目的にも地理的にも離れているようなので、亜種くらいには分かれるのかねぇと思っていましたが、かなり長いこと本種には亜種は存在せず、というかそこまで深く突っ込んだ研究がなされておらず、混沌としておりました。
しかし、2000年にオーストラリアのアマチュア研究者(と自分でも称しているようです)Raymond Hoserが自身のホームページHERP.NET(HPを開くといきなり大音量のクラシックが流れだすのでイラッときますが、笑)及びOphidia Reviewという良くわからん雑誌に一気に1種2亜種を新記載しています。カーペットパイソン界で悪名高き「学名乱発屋」のWells and Wellingtonと同様に悪名高いHoserの論文はタイプ標本に関する記述も少なく、元のアルバーティスパイソンのタイプ標本との比較も無かったり、亜種として記載した形態的特徴も、別に他集団内の変異の幅に収まっていたりと、検定もかけずにドンドコ新(亜)種として記載するため、多くの著名な研究者がこれを批判してきました。(例えば Wüster
et al (2001))
だって、コレって生物学的な意義も考えず、ただ自分で名前を付けたいがためにやってるとしか思いませんもの。権威ある学術誌に投稿せず、同人誌の様な雑誌になぁなぁで掲載するのもおそらくリジェクトを喰らうのが分りきっているためで、こうした確信犯的なアマチュアはかなり迷惑な存在であると言えるでしょう。
しかし、、命名規約上は最低限のルールは保守しているらしく、これを棄却する事は出来ずに学名としてはとりあえず、確定してしまっているようです。この後、多くの研究者はこれを支持せず、Mark O'sheaなんかも頑なに自分の本ではこの学名を使わなかったりしたんですが、2008年に再びアルバーティスパイソンの分類を扱った論文がJournal of Herpetology誌に掲載されました。
Schleip, W. D. 2008. Revision of the Genus Leiopython Hubrecht 1879 (Serpentes:Pythonidae) with the Redescription of Taxa Recently Described by Hoser (2000) and the Description of New Species. Journal of Herpetology 42(4): 645–667.
この論文の著者はWulf D.Schleip というドイツのプログラマーの方のようで、Hoserと同様のアマチュア研究者であるようですが、この場合アマチュアといっても研究機関に属していないだけで、Wulf氏の論文はHoserのものとは雲泥の差があります。てか、研究業に所属してないだけで、普通にプロの研究者っす。ちょっと面白いのがWolf氏に協力している研究者の多くが以前Hoserを批判した方々で、Wulf氏自身も自分のHP(http://leiopython.de/index.html)でかなり辛辣なHoser批判を展開しています。
おそらくこの方アルバーティスパイソンがめっちゃ好きなんでしょうねぇ。HP見ていてもその愛がひしひし伝わってきます。それゆえテキトウやらかしたHoserが許せなかったのでせう。
さて、この論文においてWulf氏は自身が記載した4種を加えて
Leiopython の6種についてまとめています。
Leiopython albertisii 最もポピュラーなアルバーティス。まあ大抵の場合コレがノーザンタイプとして日本に入ってきます。分布域はニューギニア島北西部。分布の東端はMadangと呼ばれるあたりみたいです。Google Erathなんかで検索すると出てきますので参考にするといいでしょう。この名前で分布を見てやるとオーストラリアにも
Leiopython albertisii の名で分布記録があるらしいのですが、その標本が無く、その後も発見されない事からどうもミズニシキヘビ
Liasis fuscus との誤認が原因だったのでは、と今では考えられています。
パプアニューギニア側のビスマルク諸島北端のMussau諸島、およびEmirau諸島にぽつんと分布する個体群も形態的な差異はないとして本種に含まれています。ちなみにMussau諸島の個体群はHoser(2000)によって
Leiopython albertisii barkeri として記載されてたものですが、Wulf氏は「ニューギニア島のものとちがわねーよ。DNA解析しただと?何処にもその結果記していないでほざいてんじゃねーよ」と論文とHPで吼えています。
他種との識別形質としては主に頭部の鱗の形態を指標にすると良いらしく、本種には2ペアの大きな頭頂板が存在し、後方の頭頂板が1枚もしくは2枚の細長かったり、小さかったりする頭頂間板によって遮られてるとされています。ただし、個体群によっては後方の頭頂板が分断されず、頭頂間板を取り囲むようにしてくっついているものもあるようで、そのバリエーションについてはHPでも図示されています。実際うちにいる2個体を見比べた場合も、この部分に差異が見られました。まぁそれでもおっきな頭頂板が2ペアあれば本種でいいんじゃない?という感じでしょうか。
L. hoserae を除いたその他の種と本種は、本種にバリエーションがあることから結構紛らわしい点もあるようですが、
L. biakensis 以外の3種はみなパプアニューギニア側に生息しており、かつ局所的な分布をしているため、おそらく日本で出回ることはなく、趣味的に見た場合あまり問題視する必要はないのかもしれません。
色彩としてみた場合、本種はかなり明確に頭部と胴体部の色彩が分かれるため、日本に同じよう入ってくる
L. hoserae と区別する事は容易かと思われます。幼蛇の頃はどちらも黒っぽい色彩をしているため、多少紛らわしい場合もありますが、本種の場合よーく見ればやはり体側面に若干の黄色味もしくは赤茶色が浮き出しているので、こうした色味の無い
L. hoserae とは見分けられるでしょう。また、
L. hoserae には目の後ろに白いラインが入らないので、その点でも見分ける事はできます。
しかし、本種を飼育しているとわかるのですが、この蛇色合いをコロコロ変えます。所謂「ゴールデン」と呼ばれるような胴体部がバナナ色した個体でも気分か温度か湿度かはまだちょっと分らないんですが、数十分の間に赤黒くその色彩を変化させたりします。上の1枚目の個体もあぁいう明るい色彩をしてはいますが、2枚目の個体の様な色彩をしている場合もままあります。パイソンでこうした色の変化をする種って結構珍しいんじゃないかと思うのです。
行動的には、本種の場合防御行動として "bolling" 所謂丸くなる防御体勢をとるらしいのですが、
L. hoserae はしないとのこと。マウスなんかの哺乳類を与えると、どちらも fur ball と呼ばれるケモケモを吐くのは共通した性質のようです。
L. hoserae ニューギニア島南東部に分布する巨大な種。他種が大体1,5m前後なのに対して、平気で2mを越える漆黒のニシキヘビです。これは成長するとかなり他種とは容貌、と言うか纏う雰囲気が違いますので、識別は簡単でしょう。
Leiopython albertisii とは亜種程度の差異かなぁと思っていたんですが、かなり形態的に差異があり、同時に遺伝的な情報もこれをサポートする形で結果が出ており、別種として記載する方が的確かと思われます。そもそもニューギニア島内が中央部の山脈によって南北に分断され、
Leiopython albertisii とはこうした地理的隔離が働き、それぞれ異なる進化史を歩んで種分化したんだなぁと島の地形を見ているとおぼろげながらイメージできます。
本種について詳しく調べだしたきっかけというのが「キミカ、キミカ言われるけど、それどこやねん」って思ったからで、最近はグリーンパイソンの産地インフォにも冠される様になった地名ですから有名どころなんだろな~って思ってました。で、いざ調べて見ると出てこない。「kimika」ってしても出てこない。何処だよ!?って思ってたら「timika」ってのが一般的な呼称のようですな。そのまま読みゃあ「ちみか」って。志村けんですよ。まあ最近はティミカって書かれることも多いようですが。
ニューギニアは元々文字の無い文化だったわけで、殆んどが口語での伝達だったり、現在の地名の多くもむりくり言語化しているので、表記や聞き取った言葉での感じ方には色々あるのでしょう。実際昔の地図を見て見ると「ミミカ」って書かれていたり、近くには「timuka」って地名もある。ワケワカメ。
でも、まぁこうしてキミカが「tikmika」という事がめでたく判り、早速グ-グルアースなんぞで検索をかけると、グリーンパイソンの産地インフォとおんなじで、ズバリ空港があるとこなんですね。しかも航空写真見て見るとかなり町じゃないですか。なんでも近くにドでかい金鉱と銅山を有しているとか。そりゃ発達するわ。地理的には内陸部で、グリーンパイソンの産地の一つとして有名なメラウケから南西に500kmくらい行ったところにあるようです。
本論文ではサンプルの多くがニューギニア側から得られたもので、キミカ(ってしときます。ティミカより語呂がいいんで)を含むインドネシア側のものはあまり多くを検証していないのですが、そう差は無いんじゃないかなぁと思われます。
現地では
L.albertisii 同様かなりの普通種らしく、テコテコ道を這ってるよう。マーク・オシーもアメジストとかカーペットとかよりもしょっちゅう良く見るてなことを書いてます。うらやますぃ。
L. bennettorum ニューギニア島東部の標高1050~1400mクラスのWauと呼ばれる一帯に分布しているニシキヘビです。こいつの場合インドネシア側には分布していないらしく、また生息地もスポット的なので、日本に入ってくることはまず無いかと思われます。Wauというのは高い標高もさることながら、ニューギニア島においてはかなり乾燥した場所らしく、昼下がりの午後の湿度は年間を通じて60%ほどらしいのです。ニューギニアの軽井沢といった感じでせうか?
本種の分化には、こうした地理的隔離もあるのでしょうが、生態面でひとつ面白い記述がありました。それは同地ではニューギニア島の他地域よりネズミ類の繁殖期が早く訪れるとのことです。ネズミ類は本種の様なニシキヘビには需要な餌資源で、その繁殖期と言うのは本種の繁殖期にも関係しており、この地域のネズミの繁殖期に合わせて他地域のアルバーティスの繁殖期とはズレていっている可能性があるとのことです。チビネズミが多く居る時期にハッチした方が良いですものね。
まぁ、これはまだ推測の域らしいので、今後の研究に期待されるとこですが、そうした要因でも分化が生じる可能性ということでしょうか。
で、そんなところに優雅に生息している本種の写真を見て見ると、パッと見まぁぁぁ普通のアルバーティスとかわんない。色もキミカとは違って黒くなく、アルバーティス色しております。ではどこで見分けるかと言うと頬板。これが本種では多いわけです。写真を見ると判りますが、蛇の顔を横から見た場合眼と鼻の穴の間にちっちゃい鱗が何枚か入ってて、他種ではすっきり。コレで見分けるのが一番容易なようです。また体中央部の体鱗列数の平均が最も多いというのも見分ける指標のようです。参考までに各種の体鱗列数を。括弧内は平均。
L.albertisii : 43-51(47.1)
L. hoserae : 45-52(48.1)
L. bennettorum : 49-54(51.6)L. fredparkeri : 47-51(49.1)
L. huonensis : 43-55(48.3)
L. biakensis : 45-47(46)
まぁ、わっかんないすね。というわけで本種だと同定するには顔の鱗を見てやればいいわけです。ちなみに眼の後ろの白いラインは無いらしく、その点で
L.albertisii とは見分けがつきそうです。ちなみにコイツはHoserのおっさんが
L.albertisii の亜種として先に記載していました。
L. fredparkeri さあ、ここらへんになってくるとちょっと頑張らないと見分けがつかないぞ。うへぇ
本種の分布は
L. bennettorum と同じく標高の高い1100~1500mのKirimui basinというあたりで、気温も最高25℃前後とかなり低い地域のようです。低地とはかなり隔絶されてた場所のようで、固有の鳥類なども見られるようです。
アルバーティスパイソンの繁殖記事をチラホラ見ていると、クーリングは「20℃前後まで冷やす」などとパイソン飼育をする上で怖ろしい事が書かれている場合もありますが、実はかなり耐寒性のあるグループなのかも。実際僕は神奈川にいた頃、うっかり飼育下のアルバーティスを20℃以下に晒した事がありましたが、当ヘビは風邪も引かず、現在もケロッと生きております。
L. bennettorum の生息域とは直線状で見ると400kmくらいしか離れておらず、かつ間の山は繋がっていそうなんですが、形態的に分かれるようで、ここでは別種とされています。色彩的には
L. bennettorum よりは、
L. hoserae と似たところはあるようです。
L. hoserae と本種は地理的に隔離されてるし、産卵数や頭胴長に差異が見られる点など別種に昇格することは受け入れやすいですが、本種と
L. bennettorum あたりになってくると分布の境界や遺伝子流動などをより詳細に調査する必要があるかもしれません。
L. huonensis そして、こいつになってくるともうどうでも良くなる感じ、笑。少なくとも日本には入ってこないでしょうし、入ったとしても趣味的にはどうでもいいかも。分布はニューギニア島北側で、所謂ノーザンフォーム。それも半島モノです。
ただし、見分けは頭頂板が大きな1枚のペアがあり、その他の鱗が非常に小さくなっているようなので、「あ、コレ違う」と判断するのは容易そうです。
本種の分布するHuon半島は、Ramu川という河川で沿岸部から山脈手前まで分断されており、それゆえ遺伝子流動が妨げられ本種と
L.albertisii は分化したと考えられています。まぁ形態的には分かれるわけですが、ここらへんの遺伝的解析は今後行なって、アルバーティスパイソンの分化と地史を絡めた研究は行なってみる価値があるかと思われます。
L. biakensis これまたグリーンパイソンで有名な産地ビアク島の島嶼個体群。ビアクのグリンパイって僕一番好きなんですよね。あの適当に黄色が残る感じがたまんない。顔つきもカッコイイし。ソリッドに緑っていうよりテキトウな模様の方が好きなんですよね。
と、脱線脱線。でも、ですね、コイツに関してはあんまり書くことがないんですよ。写真も無ければ、記載されている情報も少ない。調べられた個体が2個体ですしね。ただし、本論分のほかいくつかで本種を別格扱いにする向きもあるようです。が、ちょっと手が回らない。新種記載された中でたぶん一番手に入る可能性があるのが本種なんでしょうが、来た場合見分けつくかしら?
そもそも島嶼個体群なので、別種に昇格できるかは微妙な問題ですが、著者はForest and Hillis (1990) の「識別可能な異所的集団は亜種より種としてみなすべきである」という主張にしたがっているようです。まぁ、日本で言えば感覚的には各島のサキシママダラを別種にするか亜種かってなものに近い印象を受けますが、これも今後は遺伝的解析でサポートする問題なのかもしれません。
いや、勿論趣味的に見れば「なんか違う」ってのは大事ですが、同時に混乱の元にもなりますからねぇ。とりあえず鮮明な写真が出回ることを願います。もしくは「ビアク産です!」っていう産地インフォが確実な個体が僕の元に届く事を、笑。
とまあ、ざっとアルバーティスコンプレックスを書き連ねてみたのですが、判りにくいっすね!
しかし、趣味の世界で亜種やら種やら、はたまたロカリティーを議論する場合、実際そうしたやりとりで行なわれる議論では科学論文や信頼できるデータを下にしていない様な場合が多多あるように感じます。たとえばインボイスを鵜呑みだったり、自分の感覚と経験で分けたりと、それって根拠になってないなぁと思うようなことがしばしば。ある程度共通の認識で「この亜種はこうで、このロカリティではこう」という正確な形質的な情報が無いと、そもそも色彩などリベラルな情報では混乱が生じ、形質でもホントにしっかり見ていかないとハッキリした事は言えないんですよね。亜種のカテゴリーでは中間型なんてのもザラに出るわけですから。
今回のアルバーティス分類は多分今後も普及には一寸時間がかかるだろうし、日本にはせいぜい従来アルバーティスやキミカを含めて3種くらいの入荷しか望めないので、このコンプレックスについて現物を見ながらあーだこーだいう機会は無いとは思うんですが、もし全ての種が入ってくるような事があればこの論文の著者の様に、アマチュアでいながらも熱く情熱を傾けるやり取りをしてみたいっすね。
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テーマ:爬虫類 - ジャンル:ペット
2009/02/13(金) 16:54:56 |
アルバーティスパイソン Leiopython
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