コモンオオカミヘビ
Lycodon aulicus 英名で Common Wolf Snake、もしくはCommon House Snake と呼ばれるヘビで、生息域では相当に普通種らしい。しかし、生息域がインド周辺ということで、日本に入ってくる機会は非常に少ない。というかこれが初入荷個体かもしれない。名前だけは有名だが、ほぼ流通することのないヘビで、(欲しがる人はほとんどいないが)珍品といえよう。以前は同じ名前でシモフリオオカミヘビ
Lycodon capucinus が混同されて流通していたが、種分割され(
L. capucinus は
aulicus の亜種扱いだった)たことで、混乱は少なくなった。そもそもこの2種はフォルムは酷似しているが、色彩がまるで異なる。シモフリオオカミヘビも現地では普通種らしく、分布域も東南アジア一帯ということで、ペットルートではたまに見られる。
トリンケットヘビのような上品な地色に、ほんのりと黄色味を帯びるH型のバンドがインドのヘビらしい独特の雰囲気を醸し出す。黒目がちで、扁平な頭部はバイカダなどの白黒のオオカミヘビ連中とは一線を画く。オオカミヘビとしてはやたらと高かったが、入手する機会もなかろうと即座に購入した。こんなヘビ欲しがる人はそういないから二束三文で売ってくれればいいのだが、輸入元に最近こうした珍品の価値をきちんと精査できる人がいるので始末が悪い、笑。最もその御仁のおかげでこうしたヘビが日本に入ってくるのだけれど。
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2012/10/20(土) 23:26:09 |
Dinodon/Lycodon
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キタマダラ
Dinodon septentrionale 先日孵化したキタマダラのハッチリング。全部で8卵産んで、孵ったのが6卵。まぁ、まずまず。
ハッチを見るといかにもアマガサくさい。この擬態の完成度はどのマダラヘビ・オオカミヘビよりも高いと思う。ただバンドの細さをみると同所的に生息する
B. multicinctus よりスリランカの
B. ceylonicus に似てしまっているのは御愛嬌。
しかし、こうしても見ると以前に香港CBとして購入したキタマダラは遙かに白バンドの幅が広くて、今現在もその割合は変わらないことからキタマダラというよりも2009年に記載された
Lycodon ophiophagus に酷似する。
その個体の昔・今。
幼蛇の頃の頭部の白斑の入り方も特徴的で、こうしてみ比べると矢張り白帯は広い。ただし、ベトナムの爬虫類図鑑を見てみると、当地のキタマダラは上の写真の個体と同じくらい白帯は広い。比較的広域に分布する本種のことだから地域変異が存在しているのかもしれない。
今回のハッチのパパ君。
上の個体とはかなり印象が異なる。というより、こちらが本来の脳内キタマダラに近い。
L. ophiophagus の記載論文読んだ時はキタマダラとの比較がされていないかったので、すごく尻の座りが悪い印象があった。
L. ophiophagus は分布がタイということだが、ベトナムとは山脈で分断されているとはいえ、これはキタマダラのベトナム個体群ともう一度比較検討する必要があるように思える。ここらへんのDinodon,Lycodonの線引きも曖昧なわけだし。
しかし、ペット業界では蛇ってのはあんまし他の爬虫類に比べてホンモノニセモノ論争がおきんね。例のムッスラーナのボイルーナ問題でもあれこれ言ってたの例の管理人さんとくらいだったし。
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2012/09/05(水) 23:37:26 |
Dinodon/Lycodon
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シロオビオオカミヘビ
Lycodon subcinctus sealei マレーシア産
The Reptile Database が復活してる。なんかちょっとだけ派手になった?笑
最近記載されたオオカミヘビ達
Lycodon も丁寧に載っていて、やはりあると便利です。だいぶ某輸入屋と某ショップの陰謀でオオカミヘビが集まり、未記載種でしょうねぇと思っていたものも去年ポコポコ記載されて、それでもやっぱり良くわからんのがいるあたり、まだまだこのグループは面白いです。
で、写真のシロオビオオカミヘビ。単純にかっこいいですよ。この角度と顔つきですと猛毒種でモデル種のアマガサヘビとのジャッジが厳しいんですが、そのあやふやな危なさが僕を魅了します。別にこの蛇自体は無毒なんですが、咬まれるとやはりアマガサヘビを彷彿させるのでドキッとします。中々ここらへんのドキドキ感は理解してもらえないんですが、インドネシアとかマレーシアにフィールドワークに行ってる人に話すと理解されます。とりあえず、白黒って危険で、そのまんま葬式信号なんですね。関係ないですが、シロマダラが墓場蛇って呼ばれるのも葬儀を連想させる白黒模様だからでしょうかね。とまれ、バンドパターンは危険を連想させます。
こんな蛇ばっかすきなんで、デザバンのカリキンをホイと出しても警戒されることがあります、笑。
このヘビは成長すると一部分を残して、写真のように黒くなります。若い頃はきちんと尾部まで白黒のアマガサヘビ擬態パターンを持っているんですが、成長とともに消失するようです。このヘビが生息する地域には他にも何種類か白黒バンドを持つ近縁種がおり、それぞれ幼蛇の頃は皆似たような白黒バンドですが、成長に伴い何らかの変化をして成蛇ではまったく異なるパターンを示すことが多いように思えます。同所的に生息するヘビたちのこうしたお互いへの配慮というか、まぁ進化的戦略を垣間見られる様な気がして、そういう意味でも僕はこのグループのヘビたちが好きです。
願わくば、雌雄揃うことを…幼蛇見たいですからね。このグループは圧倒的に雄が多くて、ペアが揃わんのです。ただ、写真の個体は雌なので雄来ないかなぁと期待して待ってます。
あ、そういえば今日の「飛び出せ!科学くん」でグリーンマンバとかヤブコノミ、そして
Naja ashei たんが出てましたねぇ。あれは凄い。毒蛇の映像見ると笑いがこぼれる僕ですが、今日は久々に笑いました。あぁ、コブラ探しに行きたい。
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2010/10/09(土) 22:15:38 |
Dinodon/Lycodon
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チャイロオオカミヘビ
Lycodon effraenis だいぶ前の記事で「チャイロオオカミヘビ来たけど死着だったYO!チクショー!」って書いたんですけど、あの後すぐ新しい個体が入荷されて、サクッと買いました。ビバガの新着に載っていた個体で、それを待ち望んでいた、超極々一部のマニアです。すいません。
まぁ、こんな地味な蛇欲しがりませんわな。僕もポア・パイソンマニアとか大型ナミヘビ好きだったら、見向きもしないと思います。でも、僕はイチ蛇好きとしてすべてのヘビを愛します。そして、ここ数年はディノドン・リコドン、アジアのヘビブームなんで、そりゃ欲しかったですよ。結構広域には分布して入るようで、外国の爬虫類相を紹介するページなんかでも「普通種」とか書かれているんですけど、まぁぁぁたく入荷がない。そんなに見つからないもんかな~とは思いますが、需要もない分居てもあんまし出荷の対象とみなされないのかもしれませんね。最もここ最近は、こうした「誰が飼うンだよ」って蛇を色々と頑張って入れて下さる御仁がおりますので、ちょっと控えていただけると経済的に助かります、笑。
とにかく、地味なヘビなんですが、前にも書いたように、お腹が超鮮やかなレモンイエロー。背面の地味さとこの腹面の対比のおされ具合!
こんなチラ見せされたら、興味を持たずにはいられないじゃないですか。まぁ、詳しくは昔の記事を見ていただきたいんですが(http://adashinoren.blog95.fc2.com/blog-entry-394.html)、このグループの面白さは「擬態」に尽きると思うんですよ。ただ、この擬態ってのがクセもので、ベイツ型擬態の証明というのは思いのほか困難なようなのです。そりゃそうで、「モデル、擬態者、捕食者」って繋がりを科学的に証明しなければなりません。そんなの相当困難ですよ。感覚的に「そうなってそうだなぁ」と思うことや、書くことは簡単ですが、仮説を支持する説得力ある情報をそろえるには、ほぼ不可能なんじゃじゃないかなぁ、とも思います。そして、時には妄想すら打ち砕かれることもままあります。
以前僕は、「この腹面のパターンはある種のコブラ科の蛇に擬態していて、行動面までまねている可能性があるかも」と書いたんですが、とりあえず来たヘビはまったくそんな行動とりゃしません。上の写真はやらせですが、本来ならこういう腹を見せつけるディスプレイするんじゃないかな~?と思っていました。まぁ、この場合n=1ですから、そもそも飼育下なんで、それこそ何にも言えないんづが、ちょっと期待が打ち壊された瞬間でした。結構いじめたのになぁ…
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2010/08/03(火) 21:37:16 |
Dinodon/Lycodon
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Dinodon septentrionale というわけで、ついに、あの、セプテン様が登場ですよ。
Lycodon fasciatus やタイリクバイカダと混同されて、結局本物のセプテンって何?という混乱が極々一部で巻き起こっておりましたが、こいつがおそらく本物の
Dinodon septentrionale でございましょう。
そして、この「マダラヘビ・オオカミヘビ何なんだよぅ」シリーズは一貫して白バック。とりあえず、種の特徴を浮き彫りにするためこの手法をとってまいりました。僕がアレコレ悩んでいる様は過去記事をご覧くださいませ。あ、マダラヘビとオオカミヘビの記事をセパレートしました。結構記事あったんですねぇ。
本日送られてきたセプテンは一応CBという名目のもと来たおちびちゃん。成体の写真ばかり見ていて「割とごつくなるな」と思っていましたので、小ささ、というか細さに少々焦りました。これでは確かにバイカダと見間違えるのも無理はないかも。最もこの個体は、お店に来たての頃はより小さく、かなりお店の方が小まめに面倒を見てここまで大きくなったようなので、改めてこんなわけのわからんヘビを入れて、きちんとケアして下さったショップ様にはお礼を申し上げたいと思います。餌食いは非常に良いみたいなので、ヤモリとピンク半々で地道に育ててまいります。
近年ではバラマダラがある程度流通するようになりましたし、
D. gammiei は別格として、セプテンが最もよくわからず、流通もしていない
Dinodon であるかと思われます。
D. meridionale なんてのもいますが、まぁあれは置いておきましょう。
さて、そんなセプテンですが、やはり
L. fasciatus ともタイリクバイカダとも異なる様相。まず、
L. fasciatus との相違についてまぁ顔つきが全然違いますわな。
L. fasciatus が割と鋭角的な顔をしているのに対し、セプテンは丸みを帯びて、イメージ的にバイカダにラオスオオカミヘビのエッセンスを足した感じ。そして、これはバイカダとの識別にも使えるのですが、白いバンドの入り方。
L. fasciatus やバイカダは、この白帯が体の側面をみると後半部でかなり台形状に広がっていきます。白帯の入り方のパターンは、3種とも頸部から体の中央部までは割と間隔が長く、後半部で密に入っていくという共通点はあるのですが、
L. fasciatus とはその白帯の形状で、バイカダとは同サイズであった場合、バイカダの幼蛇は体後半部の白帯の入り方がかなり黒の部分を浸食し、この個体のようにきれいなバンドにはなっていません。セプテンの模様の入り方が常々チェーンキング
Lampropeltis getula getula っぽいと言っていた意味がわかるかと思います。
目の後方から頸部に入る白帯は、いずれの種の幼蛇にもみられる特徴で、以前書いたシロオビオオカミヘビやチャイロオオカミヘビなどの
Lycodon 属で広く見られる特徴です。この帯は大人になると大抵が消失してしまいますが、これはこの色彩のモデル種とされるアマガサヘビ
Bungarus の成長に伴うバンドパターンの変化をまねているものと考えられます。
あ、ちなみに
Dinodon と
Lycodon の分類ですが、近年の分子生物学的な系統解析により、従来の仕分けが変わる可能性が出てきております。
Lycodon が割と大所帯の属で、とりあえずそれっぽいのをドンドコ記載してきたものですので、よくよく調べてみると
Dinodon とされるものが混じっていたり、別属に置くべき様なものが出てきたりと、阿鼻叫喚の様相を示しているようです。また、鳥羽さんなども頭骨の形態からも、ここらの分類の再検討を提案していますし、将来的にいくつかは入れ替えが生じる可能性が多分にあります。というわけなので現行の分類において、オオカミヘビに特徴的!とかマダラヘビはこう!というようなことを言うのは少々先走りになるかもしれません。多分誰かが頑張って解析をすると思いますので、結果を静かに待っていましょう。
もうひとつ腹板の特徴として、
L. fasciatus は腹面全体に黒染みのような模様が入ります。セプテンの場合はほぼ白色ですが、体の後半部に少々黒帯に対応するように黒い斑が入る場合があります。バイカダもセプテンと似たような腹板のパターンですが、やや顆粒状に黒斑が入り、セプテンほどバンドに依存したパターンをとっていない様に感じます。ただ、一つ気になる点は、腹板の模様の入り方はアカマダラやサキシママダラを見ているとわかりますが、地域差や個体差というものが顕著にありますので、大陸に広く分布するセプテンでも同様の現象が起こっている可能性は否定できません。
D. meridonale でさえ2つのタイプがあるようですし。
プロポーションを見てもそれなりの差異を感じますが、セプテンのアダルトをまだ実見していないので言及は避けたいと思います。つまりは、早く大きくなりやがれ。
とまぁ、日本中で5,6人しか興味を示さないであろうセプテン記事でしたが、マダラヘビ・オオカミヘビ種群はアジア圏で見られるヘビの中でも、かなり混沌としたアジアらしい雰囲気を持ったヘビたちです。ペットとして飼育するぶんには、少々餌が面倒であったり、ハンドリングなどには向かず、また基本隠れっぱなしですので観賞面にもあまり耐えられないグループではありますが、こうした謎解きの楽しみはかなりあるグループではあります。先日の
L. fasciatus も何やら黄色いバンドを持ったものがいたり、ザ・オオカミヘビであるモトイオオカミヘビ
Lycodon aulicus もかなりの変異が見られて、何だこりゃというようなものです。バラマダラなんかも大陸と海南島では変異が生じている可能性もありますし。
万人受けするグループではありませんし、はちゅ飼育的なものを求める方にはお勧めできるヘビではありませんが、少しでもこれらのヘビに興味の光が当てられて、生物学的に楽しもうという風潮が生まれたら幸いかと思います。とりあえず虫の世界のようにラベル情報も重要視する方向にもっていけたら良いですねぇ。
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2009/11/23(月) 12:01:35 |
Dinodon/Lycodon
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